基本的な用語
Chef でのプロビジョニングを行うには、まず Resource、Recipe、Cookbook という単語をおさえておきましょう。
これは、Chef を使うにあたって最低限作らなければいけないものです。
Resource
Resource はプロビジョニング先の "ある部分" の "あるべき状態" を宣言的に記述する DSL です。
Chef でのプロビジョニングは、Resource があるべき状態に収束されることを意味します。
Recipe
Recipe は Resource を記述するためのファイルです。
Ruby のコードをそのまま使って Resource を定義できます。
プロビジョニングを実行すると、Recipe がコンパイルされ、Recipe に定義した Resource が Resource Collection に登録されます。
Resource の収束は、基本的には Resource Collection に登録された順で行われます。
Cookbook
Cookbook は Recipe を意味のある単位で取りまとめたものです。
Cookbook は複数の環境で使いまわすことができ、たいていの場合はインストールするアプリケーションやサービス単位で作成されます。
Cookbook をつくる
Cookbook のひな形の生成
まずは Cookbook を作成しましょう。
ChefDK の chef generate cookbook コマンドを使えば簡単に Cookbook のひな形を生成できます。
$ cd workspace $ chef generate cookbook <Cookbook 名>
Cookbook のディレクトリ構成
パス | 概要 |
---|---|
recipes/ | Recipe を置きます。 |
attributes/ | Attribute を使う場合、ここにデフォルト値を定義するファイルを置きます。 |
templates/ | Template を使う場合、ここに eRuby ファイルを置きます。 |
files/ | File を使う場合、ここにファイルを置きます。 |
resources/ | LWRP を使う場合、ここに lightweight resource を置きます。 |
providers/ | LWRP を使う場合、ここに lightweight provider を置きます。 |
metadata.rb | Cookbook の名前やバージョン、依存関係などの情報を記述します。 |
Berksfile | Berkshelf の設定ファイルです。 Kitchen でテストをするときに依存する Cookbook を定義します。 |
README.md | Cookbook の README を記述します。 |
.kitchen.yml | Kitchen の設定ファイルです。 Cookbook のテスト環境を定義します。 |
Cookbook を Eclipse で編集しよう
Eclipse のプロジェクトファイル ".project" をつくっておけば、Cookbook を Eclipse プロジェクトとして開けます。
ツリービューとタブエディタ(だけ)は便利なので、 他によいエディタがない場合は、次の手順で Eclipse プロジェクトをインポートしましょう。
.project を生成
スクリプトを実行し .project を生成します。
$ cd <Cookbook 名> $ gen-eclipse
"gen-eclipse" は開発環境の ~/bin/gen-eclipse に置いてある .project 生成用のスクリプトです。
プロジェクトをインポート
Eclipse を起動し、プロジェクトをインポートします。
1 | 2 | 3 |
---|---|---|
File -> Import... | General -> Existing Projects into Workspace Next | 「/home/vagrant/workspace/<Cookbook 名>」を追加 Finish |
Package Explorer に隠しファイルも表示させる
標準では .kitchen.yml が見えないので、次の手順で隠しファイルを表示します。
1 | 2 |
---|---|
Package Explorer の ▽ を選択 -> Filters… | 「.*resources」のチェックを外す OK |
Recipe を書く
default Recipe
chef generate cookbook コマンドを実行すると、./recipes/default.rb というファイルができていると思います。
それが Cookbook がデフォルトで適用する Recipe です。
基本的には、このファイルに Recipe を書いていきます。
default Recipe 以外の Recipe は chef generate recipe コマンドで追加できます。
$ chef generate recipe <Cookbook のパス> <Recipe の名前>
Resource の要素
Recipe には Resource を定義していきます。
Resource とは、プロビジョニング先の ”ある部分” の ”あるべき状態” を宣言する DSL で、具体的には以下の要素で構成されます。
ResourceType
Resource の型を表します。
yum パッケージの状態を定義する yum_package、任意のコマンドの実行状態を定義する execute などがあります。
ResourceType によって、指定できる Attribute や Action は異なります。
詳細は各 ResourceType の公式ドキュメントに記載されているので、確認するようにしてください。
Name
Resource の名前です。
ユニークな名前を指定します。
Attribute
Resource の属性です。
Resource がどのような状態であるべきか、詳細な情報を指定します。
yum_package であれば package_name や version などを指定できます。
yum_package では Resource の Name がそのまま package_name に指定される仕様になっています。
Action
Resource の収束のされ方です。
yum_package であれば、インストールされている状態(:install)、アンインストールされている状態(:remove)などを指定できます。
ResourceType についての公式ドキュメントは Chef の公式ドキュメントから辿ると非常に見つけにくいです。
Google で「Opscode <ResourceType 名>」などと検索したほうが早く見つけられたりします。
また、Mac であれば Dash に Chef のドキュメントがあるので、これを使うのもオススメです。
Resource の実行順序
Recipe は上から順にコンパイルされ、Resource Collection に格納されます。
基本的には Resource Collection に格納された順で Resource が収束されますので、
たとえば、「ファイルをダウンロード」してから「そのファイルを解凍」したい場合は、次のように記述できます。
remote_file '/tmp/archive.tar.gz' do source 'http://path/to/archive.tar.gz' action :create end bash 'extract tar file' do cwd '/tmp' code 'tar zxf archive.tar.gz' action :run end
notifies などを利用して、Resource の実行順序を制御することも可能です。
Recipe に書いたコードは Recipe がコンパイルされるときに実行されます。
Resource が収束されるタイミングでコードを実行したい場合は ruby_block や lazy を使います。
冪等性を確保する
Chef では Resource の収束結果は何度実行しても常に同じでなければいけません。
yum_package などであれば、何も考えなくとも冪等性が確保されるのですが、
execute や bash、ruby_block などではサーバーにどのような変更が行われるのか Chef が判断できないので、
自力で冪等性を確保する必要があります。
冪等性を確保するためのひとつの手段として、ガード条件 があります。
これは、not_if や only_if を使用して Resource に収束するための条件を設定するものです。
例えば、特定のファイルが存在しないときだけ Resource を収束するには次のように書きます。
exexute 'install peco' command 'cp /tmp/peco_linux_amd64/peco /usr/local/bin/peco' not_if { File.exists?('/usr/local/bin/peco') } end
この例では、Resource が収束される直前に not_if ブロックの Ruby コードが実行され、結果が false のときだけ Resource が収束されます。
逆に結果が true のときだけ Resource が収束されるようにしたい場合は only_if を使います。
また、Ruby のブロックでなく、文字列を直接わたすこともできます。
exexute 'install peco' command 'cp /tmp/peco_linux_amd64/peco /usr/local/bin/peco' not_if "test -e '/usr/local/bin/peco'" end
この場合は not_if にわたした文字列がシェルスクリプトとして実行され、実行結果が 0 以外のときだけ Resource が収束されます。
さきほどと同じように、結果が 0 のときだけ Resource が収束されるようにするには only_if を使います。
Recipe を書く手順
- 具体的に何をしたいのかを明らかにする
- 使えそうな Resource をさがす
- 実際に Recipe を書く
はじめは、目的に対して適切な Resource をさがせることがいちばん大事です。
Google で検索してもいいですし、Dash を使ってもいいですし、Chef実践入門 や Chef活用ガイド のような書籍を利用するのも手です。
実際に作ってみる
ここまでの手順がなんとなくわかったら、次は実際に Cookbook を作ってみます。
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