少し前の2019年1月、JavaScriptのデータ視覚化ライブラリ vis.js の開発コミュニティに来栖川電算から 400$ を寄付しました。これにより開発コミュニティが目標としていた寄付金約 600$/500€ が集まり、ライブラリのメンテナンスが再開してくれました。
多くの献身があって実現してきたOSS(オープンソースソフトウェア)が、ちょっとした資金援助でまた息を吹き返してくれたことを、たいへん喜ばしく思います。
来栖川電算では vis.js を AnnoFab という Web アプリケーションでデータ視覚化や時系列データの作成などのコア機能に活用しています。つまりクリティカルなライブラリのひとつです。
vis.js は、とある会社がOSSとして公開してくださっていたようです。ところが、コア開発者が退職されたか、あるいは会社としてもう不要になったか(こうした事情までは深く追っていません)、メンテナンスが滞っていました。パッチは放置され、しびれをきらした貢献者が別ライブラリとしてフォークもしていました(今は幸い、再開した vis.js に統合されました)。
2018年11月に開発者のひとりが寄付 約 600$ を呼びかけました。たまりにたまったパッチのレビュー、ライブラリの分割、そしてvis.js を会社から切り離してコミュニティ主導に移行したい。その活動を資金援助してほしい、と。
時間をかけて別のライブラリに置きかえる選択肢もありました。ですが、たとえ開発が再開しなくとも長年の感謝を伝えたく思い、寄付をまず考えました。経営陣に相談したところ、「いいね」とスピーディに決まり、翌日には OpenCollective で寄付を済ませ、開発者に感謝とともに報告できました。
世界的に使われているOSSが、実は有志の個人・数人のタダ働きでメンテナンスしているということは、とても多いです。最初は「ちょっと便利だから、使ってもらいたい。あわよくば誰か一緒に開発してほしいな」と公開したものが大人気になり、何の資金援助もないまま、大量のバグ報告や機能追加要望や質問などで消耗し、燃え尽きる…。そしてオープンソースが幕を閉じる…。
そんな悲劇はたびたび起きているようですが、まさか自分の仕事で起きるとは思ってもいませんでした。
寄付から数ヶ月、vis.js の開発がまた再開したことで、ぼくや来栖川電算の若手メンバーもバグ修正や機能追加のパッチを送り、リリースしてもらうことができました。
この一件を通じて、近年は OpenCollective や Patreon など、OSS開発者を資金援助できる仕組みが整ってきたことを知りました。また最近は OSS をホストする GitHub でも、資金援助を呼びかけやすくる Sponsor という仕組みがスタートしたようです。
もし自分たちが使っているOSSの開発者が援助を求めていたら、手を差し伸べてみてはいかがでしょうか。
来栖川電算では今後も、スポンサーや業務内でのパッチ提供などのOSSへの貢献を続けていきます。そんな来栖川電算で一緒に働いてみたい方がいらっしゃいましたら、ぜひ採用情報をご覧ください。